PSYCHO-PASS サイコパス(1期)解説

PSYCHO-PASS(サイコパス)1期の解説を基本ネタバレなしで書くブログです.

PSYCHO-PASS サイコパス(1期) 第2話「2.成しうる者」解説

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概要

第2話は,簡単にまとめると,自身の刑事としての能力に疑問を感じ始める朱が,狡噛との会話を通して,自信を取り戻す話となっている.個人的に好きなエピソードである.

未来の科学技術

流石は西暦2112年.科学技術がかなり進歩している.朱は,キャンディという名前の召使AIに注文することで,自宅の内装を変えたり摂取カロリーが厳密に調整された食事を用意させたりしている.内装を変える技術は,内装ホロと呼ばれており,後の話でも何度か登場する.また,朱が鏡の前でいろいろ試着するシーンがあるが,ここで使用されているのはホロコスチュームと呼ばれる技術で,実際に身にまとっている衣服の上からホログラムを重ねることで自由な格好を実現していると推測される.

超エリートな朱

朱は,友人である,ゆき・佳織の2人に配属初日の出来事についてぼんやりと説明し(公安局関係者は具体的な仕事の内容を話せないから),自分自身の公安局勤めに対する適性について相談する.朱の公安局のキャリアなんて私に向いてるのかな?の一言にムッとする2人.実は,公安局は超エリートコース(とりわけ監視官は公安局の中でも出世コース)で,誰でも歩めるキャリアでないだけに,この発言は嫌味に取れる贅沢な悩みらしい.朱は,経済省・科学技術省の適性が出ていたにも関わらず,その全てを蹴り,公安局を選んでいる.ちなみに,友人2人の職業については,ゆきは身体を動かす何かしらの職業で,佳織の方はSE(システムエンジニア)らしい.

全然関係ないが,友人2人からも言われているように,朱は全然色相が濁らないたちで,色相美人らしい.

成しうる者が為すべきを為す

ゆきの「成しうる者が為すべきを為す これこそシビュラが人類にもたらした恩寵である」という発言.おそらく,シビュラシステムのスローガンみたいなものであろう.

挙動不審

朱は狡噛の容体を確認するために分析室を訪れる.ちょうど朱が分析室に入るタイミングで,六合塚が部屋の中から出てきて,入れ違いになる.このシーンで注目していただきたいのが,六合塚と唐之杜の挙動である.六合塚ネクタイを直しながら部屋から出てきており,唐之杜急いでストッキングを履いている.部屋で何をしていたかまでは分からない.

分析官 唐之杜志恩(カラノモリ シオン)

分析担当の潜在犯.医師免許も保有しているらしい.普段から便利にこき使われていることについて,朱に愚痴をこぼす.おそらく優秀な人材なのだろう.

出動

足立区伊興グライスビル内部で,規定値を超過したサイコパスが計測される.朱は,征陸を連れて現場へ向かう.ここで注目したいのは,彼らは犯罪を未然に防ぐために出動しているという点だ.リアルな世界では,警察は事件が起きてから動き始めるので,基本的には後手に回る形となるが,この作品内ではサイコパスのおかげで先手を打つことができる

さらに自信を失う朱

征陸は,お得意の刑事の勘により,スキャナーも使用せずに挙動不審な男を見つけ出し,あっさりと身柄を確保する.そのため,朱には出る幕がなかった.配属初日の事件といい,朱は問題解決に全く貢献できない

征陸は,執行官を現場まで連れて行き,監視することが監視官の役目である,と落ち込む朱を励まそうとする.しかし,この言葉は朱にとっては,何も手出しをするな,と言われているように感じられる.

どんな生き方でも選ぶことができた朱と選べなかった縢

朱は縢と夕食を共にする.縢は非番だが,執行官の自由は制限されており,刑事課フロアと宿舎以外行く場所がないそうだ.自信を失って落ち込んでいる朱は,縢にも,自分自身が監視官に向いているか相談する.

会話の中で,朱にはシビュラ判定の職業適性で,13省庁6公司全てにA判定が出ていたこと,また500人以上いた学生の中で公安局にA判定が出たのは朱だけだったことが明らかになる.朱は,自分にしかできないことがあるはずだと思い,公安局を選んだ.また,「この世界に生まれてきた意味が見つかるはずだって」とも言っている.しかし,この発言は縢にとっては非常に面白くない.縢は,幼少期にサイコパス検診ではじかれて以来,潜在犯としての人生を歩んでおり,一生隔離施設で過ごすか執行官になるかしか選べる道がなく,後者を選んだ.

ここでは,どんな生き方も選ぶことができた朱と,生き方を選べなかった縢が,対照的に示されている

もはや自分の生まれた意味など考えもしない社会

縢も言及しているが,自分が生まれてきた意味について思考するのは,シビュラシステム導入以前の古い人間の価値観である.なぜなら,シビュラ判定により,最も適性のある職業を自分の意思とは無関係に割り当てられるような社会だからである.

自信を取り戻す朱

朱は,ドミネーターで撃った件について,狡噛に謝罪する.朱は明らかに自身の状況判断に自信を持てなくなっているが,狡噛は役目より正義を優先したという意味で,むしろ朱の行動を賞賛する.狡噛は,何が正しいかを自分自身で考える朱の下でなら,ドミネーターの言いなりでしかない猟犬としてではなく,正義を全うする刑事として働くことができるかもしれない,と語る.何が正しいかを自分自身で考えることが刑事としてあるべき姿であることを再認識した朱は自信を取り戻す

狡噛の異常な執念

十分に考える時間があれば,狡噛も被害者女性をドミネーターで撃とうとはしなかっただろう,という朱の発言に対して,狡噛は肯定しない.狡噛は,自分のやり残した仕事に方をつけることに執念を燃やしており,やり遂げるまでは絶対に死ねないという思いから,自身に少しでも身の危険があるならば,どんな潜在犯だろうが迷わず執行するという心理状態に陥っている.

エンディング

狡噛との会話を通して,刑事としての自信を取り戻した朱は,配属初日の状況判断(狡噛をドミネーターで撃ったこと)について,落ち度はなかったとして宜野座に報告する.

宜野座狡噛 何か言いたいことは?

狡噛「ない.常守監視官を義務を果たした.それだけだ.

このセリフの直後にはエンディングテーマの「名前のない怪物*1が挿入される.このタイミングが完璧すぎる.

PSYCHO-PASS サイコパス(1期) 第1話「1.犯罪係数」解説

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概要

第1話はこの物語の設定,および頻出の用語を理解するためのウォーミングアップとなっている.

冒頭

オープニングテーマ『abnormalize*1が流れる中,主人公の1人である狡噛慎也の戦闘シーンから始まる.後半では,狡噛慎也槙島聖護が対面し,お互いの名前を呼び合う.この冒頭部分により,物語の中心人物である狡噛慎也槙島聖護との因縁が印象付けられる.

舞台(設定)

舞台は西暦2112年の日本.厚生省が管轄する「シビュラシステム*2が,人間の心理状態や性格的傾向を計測し,数値化することで「管理」する社会となっている.

サイコパス(PSYCHO-PASS)とは

アニメ内で使用される「サイコパス」という用語は,リアルな世界で我々が使用している言葉とは意味合いが異なる.エンディングテーマの最後には,次のようなテロップが出てくる.

人間の心理状態や性格的傾向を計測し,数値化できるようになった世界.あらゆる心理傾向が全て記録・管理される中,個人の魂の判定基準となったこの測定値を人々は,『サイコパス(PSYCHO-PASS)』の俗称で呼び習わした

つまり,「サイコパス」は個人の魂の判定基準となる測定値のことである.

色相とは

サイコパス色相とも呼ばれ,生体反応の計測値が,「」として視覚化され,日常的なメンタルケアの指標となっている.街頭スキャナーでスキャンするのはこの色相.

犯罪係数とは

シビュラシステムにより数値化されたパラメータの一つであり,個人が犯罪者となる可能性を示す数値.この犯罪係数が規定値を超えた者たちは潜在犯と呼ばれ,社会的に隔離される対象となる.

事件の概要

容疑者,大倉信夫.街頭スキャナーで色相チェックに引っかかり,セキュリティドローンにセラピーを要求されるも拒絶し,廃棄区画に逃亡.また,逃亡中に通行人1人を拉致し,人質にしている.

監視官と執行官

監視官執行官にはそれぞれ役目がある.

まず執行官とは,本来ならば潜在犯として隔離されるべきところを例外的に認められた社会活動として,同じ犯罪者を駆り立てる役目を与えられた猟犬のこと.そして監視官は,執行官たちを監視し,束ねる羊飼いのこと*3

実際,作戦中のコードネームとして,執行官たちは「ハウンド(猟犬)」を用い,監視官たちは「シェパード(羊飼い)」を用いている.

登場人物では,常守・宜野座(ギノザ)監視官であり,狡噛・征陸(マサオカ)・縢(カガリ)・六合塚(クニヅカ)執行官である*4

ドミネーター

携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーター.照準を合わせた対象の犯罪係数を計測することができ,その犯罪係数を基に執行モードが変化する.犯罪係数100以上執行対象となり,執行モードは,100~299ノンリーサル・パラライザー(対象を殺害せずに気絶させる),300以上リーサル・エレミネーター(対象を殺害)となる.実は,ドミネーターにはもう一つ執行モードが存在するが,またそれは登場時に紹介する.

サイコハザード

犯罪係数は性質上,伝染する.つまり,犯罪に巻き込まれた被害者の犯罪係数が上昇する可能性もある.

シビュラを盲信しない朱の姿勢

狡噛が容疑者をドミネーターで排除したのち,征陸は犯罪係数が上昇した被害者女性を保護対象としてノンリーサル・パラライザーで執行しようとする.しかし,朱は乱暴な手法に納得がいかずこれを止める

狡噛に追い詰められた被害者女性は更に犯罪係数を上昇させ,ドミネーターの執行モードもリーサル・エレミネーターに切り替わる.被害者女性を排除しようとする狡噛を止めるため,朱はパラライザーを放つ

これら一連の行動から,朱は常に何が正しいかを自分自身で考え,シビュラシステムによる御託宣を鵜呑みにしないという姿勢が窺える.

狡噛の口パクシーン

被害者女性を排除しようとする直前,狡噛は朱に向かって何か呟く.口パクの内容はわからない.個人的には「嫌なら,撃ってみろ」のような挑発的な発言ではないかと考えている.

感想

今回は第1話の要点を解説した.初めて作品に触れる視聴者からすると,情報量が多く,困惑した方も少なくないと思う.特に,サイコパス」,「色相」,「犯罪係数」といった用語非常に紛らわしい

*1:凛として時雨『abnormalize』

*2:シビュラギリシアローマ神話で,主にアポロンの信託を受け取る,古代地中海世界における巫女のこと

*3:シェパードには牧師と訳される場合もあるが,羊飼いの方がしっくりくる.だが,執行官は羊ではなく,猟犬なので,指導者という訳が適切かもしれない

*4:全然関係ないが,サイコパスシリーズに登場するキャラクターの名前は難読漢字が多く,初見ではまず読めない